「あの……さん、」
「なに?アレン君。
それとさん付けする必要はないよ。ただのでいい。みんなそう呼んでる。」
「あ……なら僕もアレンでかまいません。
あの、すみませんでした。今回の任務、迷惑ばかりかけてしまって。」
神々の黄昏9
マテールからの帰りの汽車の中で、アレンはに言いにくそうに謝った。
は予想していなかった事に僅かに目を見開いた。
「アレンが謝る必要なんてないよ。
私がそんな事で怒るとでも思った?あのぐらいの事、迷惑でも何でもないよ。」
そう言って、は優しく笑う。
意外な返事にアレンは驚いたが、今回の任務でに対する印象が大きく変わってきた事を感じた。
はニコニコと笑っている。それはリナリーに向けるような優しいもので、本当に怒ってはいない様だった。
「ところで、あの銃刀型の新しい対アクマ武器だけど。
損傷してるよね?何だったら、今の内に私が修理しておこうか?」
「え、対アクマ武器の修理ってコムイさん以外でも出来るんですか!?」
の提案にアレンは目を輝かせ身を乗り出すほどに驚いた。
それならあの入団の時のトラウマになるような修理はする必要なかったじゃないか、と。
「まあ、寄生型まで修理出来るのは教団内ではコムイさんと私くらいだけどね。
教団に帰っちゃったらコムイさんがやりたがると思うから、今のうちに出来ればいいんだけど。嫌かな?」
「まさか!そんなこと無いです。ぜひお願いします!!」
アレンはコムイのグロテスクな修理を思い出し、天の助けとばかりに目を輝かせた。
それを聞くとは小さな腰のウエストポーチから様々な器具を取り出すと徐に修理を始めた。
『四次元ポケット?』とアレンは質量保存の法則を無視したそのバッグにぎょっとしたが、
またの不思議な発明品なのかもしれない、と深く突っ込まないことにしたのだった。
***
暫くして綺麗に直った左腕を眺めながら、アレンは感嘆のため息を吐いた。
人が違うとこんなにも違うものなのか。そんな思いが胸を占める。
「もしかして、コムイさんの修理があんなにグロテスクなのってワザとなんですか!?」
「ああ、そうだと思う。コムイさんの修理技術は私のそれを遙かに超えているはずだよ。」
「……。」
「まあ、あれはコムイさんなりの思いやりなんだよ。
エクソシストにあんまり簡単に怪我をしてほしくないからだと思う。」
のフォローに少しだけコムイの株は持ち直されたが、やはりあのショッキングな修理を思い出すと、
アレンが素直に納得する事は出来なかった。
それが顔に出ているアレンを見ては少し笑うと、窓の外でぱらぱらと雨が降っていることに気づいた。
「あ、雨が降ってきましたね……」
「酷くならないといいけど……」
しかし窓にあたる雨は確実に強くなっていた。
***
駅に着いたとき、雨は大降りになっていて傘の無い達はフードを被り教団へと急いだ。
「やっと着いたー。」
「びしょ濡れになっちゃいましたね。」
結局かなり雨に打たれてしまい、コートは重さを感じるほどに雨を吸っていた。
早く部屋に戻ってシャワーを浴びたい、と思いつつは肌に張り付く服を摘んでため息を吐いた。
そんな達を乗せ、ゆらゆらと船は揺れながら教団の水路を進んだ。
「到着致しました。」
「ありがとう、トマ。」
船着き場に足を降ろし、は同じ体勢でいたために固まった身体を大きくのびをしてほぐした。
ドサ
「え?」
「何ですか?」
不審な音に足下を見ると、なんとリナリーが倒れていた。
あまりに予想外の出来事にアレンもも思わず唖然としてしまった。
「……助けてくれ……」
「え、リーバー班長!?」
ぼろぼろになって階段から下りてきたのはリーバーだった。
いったい何があったのか、と焦るアレンだったが、一方はこの光景にデジャヴを感じていた。
その予感を確かめるために恐る恐るリーバーに尋ねた。
「リーバー班長、……もしかして、コムリンですか。」
「……その通りだすまない……、俺達じゃ止められなかった……」
そう悔しそうに涙を流すリーバーと対象にの周囲はどんどん温度が下がっていく。
静かに冷気を発するにアレンは冷や汗をかいたがコムリンという聞き慣れない単語に疑問をいだいた。
「あの……コムリンって何ですか?」
「コムリンはコムイさんの作った万能型ロボットだよ。
ロボットのくせに、どうせまた何か食べたんじゃない?」
「ああ……そうだ。それより、早く逃げろ……コムリンが来る……」
事の経緯を話したリーバーは、後はまかせた、と言って意識を失ってしまった。
その直後、ドカンという爆音と共にコムリンが現れた。