リーバー班長の呼び出しは十中八九あの任務の事だろう。 昨日来たばっかりの子を“あの厄介な案件”に駆り出すのはコムイも少々意地悪だと思った。 とはいえ人手が全く足りていないこの現状で、自分を含めエクソシスト3人なら十二分、と言えるのかもしれないけど。



々の黄昏3



が司令室に着いたとき、コムイはまだ書類だらけの机に突っ伏して爆睡していた。 その様子を見て、リーバーが申し訳なさそうに謝ってきた。


「悪いな、。今起こすから。」

「いえ、かまいませんよ。 皆がそろってからにして下さい。」


寝たい気持ちは分かりますから、とは苦笑する。


「アレンとはどうだ?仲良くやってるか?」

「はい、アレンは良い子ですね。純粋で、クロス元帥のお弟子さんだとはとても思えませんよ。」

「はは、確かになあ。」


クロス元帥の破天荒ぶりは教団内の共通認識である。 よくぞあの元帥の下であれほど純粋な子が育ったものだとは感心していた。 ある意味で最高の反面教師だったのかもしれない。


、コーヒー入ったわよ。」


リーバーと談笑していると、リナリーがコーヒーを淹れてくれた。 寝不足気味のの身体に程よい苦味が染み渡った。


「ありがとう、リナリー。君の入れてくれるコーヒーは世界一だ。」

「任務、あの二人と一緒だなんて、いくらでも心配だわ。怪我しないでね!」

「……善処する。」


無傷で帰還する自信は無く、目をそらしながらが言うと、 リナリーは心配そうに眉をいさめた。


ガチャ


今にも説教し始めそうなリナリーにおびえていると、 今度は何やら険悪そうな雰囲気の神田とアレンが司令室に入ってきた。 全員がそろったということで、リーバーがコムイを起こしにかかる。


「室長!コムイ室長!」


リーバーが揺すっても殴ってもコムイは一向に起きる気配は無い。 しょうがない、と言ってがコムイに近寄って、耳元でささやいた。


「大変です、コムイ室長。リナリーが結婚しちゃうそうですよ。」


がばっ


「!!!!リナリ――――――!!!!」


"結婚"のワードが出た瞬間コムイが飛び起きた。この方法なら確実に起きるのだから、楽と言えば楽だが、度を越えたシスコンっぷりにリナリーの将来が心配になる。


「お兄ちゃんに黙って結婚だなんてヒドイよぉ――!!」


そう叫んで号泣しだすコムイにその場にいる全員が引いていた。


「悪いな、このネタでしか起きねェんだ、この人。」

「いやーごめんね。徹夜明けだったもんでね。」

「オレもっスけど!」

「私もですよ。」


科学班二人の鋭いつっこみが入るがコムイは全く気にしていない様子だ。 資料を私ながら任務の説明を始めた。


「さて、時間が無いので粗筋を聞いたらすぐ出発して。 詳しい内容は今渡す資料を行きながら読むように。」

「神田君とアレン君のコンビで……と言いたい所だけど、」


コンビでと聞いた途端、二人が心底嫌そうな顔をした。


「何かもう仲悪そうだから。ちゃんにも付いて行ってもらう事にしました!」

「よろしくー」

「だからワガママは聞かないよ。 南イタリアで発見されたイノセンスがアクマに奪われるかもしれない。 早急に敵を破壊し、イノセンスを保護してくれ。」



***




「それじゃ、みんな気を付けてね。行ってらっしゃい。」

「行ってきます。」


コムイに送り出され、3人は船に揺られ、黒の教団内の地下水路を通り抜けていった。